【中学受験、父と息子の365日戦記】第7話|自走の兆しと、葛藤する親心

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「もっと自分で勉強しないとダメだと思う」
そんな言葉を、息子が口にしたのは6月のある日だった。

言葉の意味以上に、自分の行動を自分で振り返っていたことに驚いた。
少し前まで、宿題のページすら分からず、ゲームをしては叱られていたのに。
今ではToDoリストを作り、書き出して計画を立てている。

たどたどしいし、書いただけで満足している日もあるけれど、
それでも間違いなく「自分で動こう」としている姿があった。

そんな息子の変化に、私は心の底から「すごい」と思った。
でも、同時にこうも思った。

「どうしてもっと早くやらなかったんだ」
「この調子で続けられるのか?」
「口だけじゃないだろうな?」

…せっかく芽生えた“自走の兆し”に対して、信じ切れない自分がいた。

これは、親としての試練だと思った。
期待があるからこそ、失望が怖い。
だからつい、疑ってしまう。試してしまう。
――それでは、子どもは育たない。

私はもう、信じるしかなかった。
そして、信じている姿を、子どもに見せるしかなかった。

一方で、現実は甘くない。
復習テストでは点数の波があり、凡ミスも多い。
苦手な社会は、相変わらず平均点に届かないこともある。

でも、変わってきたのは成績よりも姿勢だった。
「点数が悪かったから、今日はもう一回復習しておく」
そんな言葉が、自然に出てくるようになった。

ゲームやYouTubeを控えようと自分から言い出し、
誘惑を断つためにiPadを親に預けるようになった。
イライラする日もあるが、それでもやめようと努力している。

小さな自律、小さな挑戦、小さな成功。
その積み重ねが、子どもを“自走”へ導いていく。

親の手を離れ、自分の足で走ろうとしている息子を、
私はどこまで見守れるか。
どこまで任せられるか。

正直、まだ怖い。
でも、そうやって私も“親として自走”を学んでいる。

(続く)

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※この物語は全8話(随時更新)で構成されています。次話はこちら → 第8話