リバランスをためらう心理と、長期投資に必要な「規律」
投資に関する相談をいただきました。
教育費や老後資金など、家計の資産運用を考えるときにも「リバランス」の視点は欠かせません。
最近、株が好調で資産が増えました。
でも当初の目標は「安全資産とリスク資産を半分ずつ」だったのに、
気づけばリスク資産が増え、 40:60 くらいになっていました。
このままでもいいのか、リバランスすべきか迷っています。
規律を維持するためにも、リバランスを実行すべきです。
まずはリスクとリターンの関係を整理してみましょう。
【1. リスク・リターンの違い】
<前提>
以下の条件に基づいて試算しています。
- リスク資産:
eMAXIS Slim 先進国株式(日本除く)インデックスファンド 60%
+ 日経平均インデックスファンド 40%
→ 合成リターン 15.27%、リスク 17.27% と仮定 - 非リスク資産:リターン 0.8%、リスク 0%
この条件のもとで、
目標の50:50から現状の40:60に変わった場合、
ポートフォリオ全体のリスクは約 8.64% → 10.36% に上昇。
一方、リターンは 8.04% → 9.48% にとどまります。
💬 MK
つまり、リスクの上昇幅に比べてリターンの伸びは小さい。
これは「効率の悪いリスク」を取っている状態です。
結果的に、想定以上の損失を招くリスクを高めてしまいます。
🗣️ 相談者
なるほど。でも、いっそ目標を40:60に“変えたこと”にすれば、
リバランスしなくてもいいんじゃないですか?
結果的に同じことですよね?
💬 MK
実は、それは全く違います。
【2. 方針の維持と放置の違い】
「目標を50:50のまま放置する」のは規律の崩壊。
一方で、「目標を40:60に変える」のは新しい規律の設定です。
💬 MK
前者はリスクを放置する行為で、暴落時に後悔や狼狽売りを招きます。
後者は「10.36%のリスクを自分で引き受ける」と決めた行為。
放置とは全く別物なんです。
🗣️ 相談者
よくわかりました。
じゃあ、50:50のまま維持します。
でも今だけちょっとリスクを取って、あとで戻すのはダメですか?
たとえば「今は40:60でいって、10年後に50:50に戻す」みたいな考えです。
💬 MK
それは一見合理的に見えますが、実は矛盾した行動です。
【3. 長期目標と現時点の方針の矛盾】
10年後にリスクを下げる約束があるのに、今リスクを上げるのは、
「減らす」と「増やす」を同時に誓うようなもの。
💬 MK
一番シンプルで合理的な行動は、
最終目標の50:50を“今の目標”と見なし、
規律に従って乖離を正すことです。
🗣️ 相談者
なるほど…。
税金のこともありますが、やっぱり今のうちに整えるのが大事ですね。
💬 MK
そう思います。
税負担を抑えながら規律を回復するというのは、成熟した投資家の行動です。
ちなみに、売却で利益が出た場合には 約20%(所得税15.315%+住民税5%) の譲渡益課税がかかります。
ただし、リバランスの売却は利益確定が目的ではなく、リスク調整が目的です。
税金を理由に先送りしてしまうと、その間にリスクがさらに膨らむ可能性があります。
必要な範囲で整理し、全体のバランスを保つことが長期的には最も合理的です。
🗣️ 相談者
もうすぐ冬のボーナスが入るのでそのボーナスで一部を補って、残りは売却で戻します。
💬 MK
素晴らしい判断です。
税負担を抑えながら規律を回復するというのは、成熟した投資家の行動です。
長期投資の成功は、この 「感情に打ち勝ち、規律に従う力」 にかかっています。
まとめ
相場が好調なときこそ、「感情より規律」が問われます。
リバランスとは、リスクを整える行為です。
上昇相場ではリスクを下げ、下落相場ではリスクを取り戻す。
どちらの局面でも、感情に流されるとポートフォリオは本来の姿を失います。
自らのルールに立ち返り、静かにバランスを戻す。
その積み重ねが、長期投資を安定させ、成果を持続させる力になります。
