退職金の教科書―― 退職金制度の全体像を“正しく・わかりやすく”整理する――
退職金は、会社の制度・税金・国民健康保険・年金など、
複数の制度が複雑に絡む「日本で最も難しい個人マネー領域」のひとつです。
ここでは、退職金を理解するうえで欠かせない“基本構造”を、
体系的に整理して解説します。
実務的な判定や具体的な金額比較は、当サイトのシミュレーターと個別記事をご活用ください。
■ 第1章 退職金の基礎
● 1-1 退職金制度は大きく3種類ある
日本の退職金制度は、主に次の3つに分類されます。
- 退職一時金
退職時にまとめて受け取る最もシンプルな方式。 - DB(確定給付企業年金)
企業が“将来受け取る額を約束してくれる”制度。
ただし企業年金の財政状態によっては、将来給付が見直される可能性もある。 - DC(確定拠出年金)
企業(+本人)が拠出し、最終的な受取額は“運用次第”。
企業型DCに加え、iDeCoを併用するケースも増加している。
まずは 自分がどの制度に加入しているか を正確に知ることが大前提です。
● 1-2 企業年金の歴史とDC主流化の背景
かつて主流だった厚生年金基金や適格退職年金は、
運用難や退職給付会計によって企業負担が増大し、多くが廃止・縮小しました。
その結果、企業のリスクが小さく、制度として透明性の高い
DC(確定拠出年金) が急速に普及しました。
● 1-3 退職金制度は“企業ごとに大きく違う”
退職金制度は法律上の義務ではないため、企業により大きく異なります。
- 退職金がある会社・ない会社
- DBとDCの構成比
- DBの受取選択肢
- 一時金の計算方式
- 再雇用制度の有無
他社の情報がそのまま自分に当てはまることはありません。
まずは自社の退職金規程を確認することが最優先です。
● 1-4 退職所得控除(退職金に適用される大きな控除)
退職金の税計算の基礎となる控除で、非常に強力です。
- 勤続20年以下
40万円 × 勤続年数(最低80万円) - 勤続20年超
800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20)
控除が大きいため、適切に計算すると多くの方が低課税となります。
■ 第2章 退職金と税金
● 2-1 一時金は「退職所得」で計算される
退職金を一時金で受け取る場合の計算式は次のとおりです。
(退職金 − 退職所得控除) × 1/2 = 課税退職所得
控除が大きく、さらに1/2課税が適用されるため、
日本の税制の中でも特に優遇されている区分です。
● 2-2 企業年金(DB・DCの年金受取)は「雑所得」
一方、企業年金を“年金”として受け取る場合は、税区分が 雑所得 になります。
- 公的年金等控除が適用
- 控除後の金額に所得税・住民税
- 国民健康保険料にも影響
(前年所得に上乗せされる)
同じ退職金でも、
一時金か/年金かで税金が大きく異なる のが特徴です。
● 2-3 受け取り方法で税負担が変わる
- 一時金は、退職所得控除 & 1/2課税により非常に有利
- 年金受取は雑所得扱いで、所得税・住民税・国保に影響
- 再雇用の給与やアルバイト収入があるとさらに複雑化
退職金の税務は「部分最適」ではなく
“全体最適”で判断する必要があることがポイントです。
■ 第3章 退職金と国民健康保険(国保)
● 3-1 退職後に国保が高額化する理由
国民健康保険料は 前年所得 を基準に計算されます。
- 退職して収入ゼロでも前年所得で計算される
- 退職月によって負担タイミングが変わる
- 年金受取開始後は、雑所得も上乗せされる
制度の仕組みを理解しておくことが非常に重要です。
● 3-2 国保の計算構造
国保は以下の要素で構成されています。
- 所得割(前年所得に連動)
- 均等割
- 平等割
- 介護保険料
- 賦課限度額(上限)
自治体によって細部は異なりますが、基本原理は全国で共通です。
● 3-3 年金受取と国保・住民税
- 企業年金は雑所得
- 公的年金等控除が適用
- 住民税は控除後の金額に対して課税
- 国保は前年所得の合計で計算される
年金受取を始めた翌年に、国保の変動を強く感じるケースが多くなります。
● 3-4 退職後1年目に注意すべきポイント
退職後の1年目は、以下の要因が重なり“負担が急に増える”ことがあります。
- 国保が前年所得ベースで急増
- 住民税が一括徴収になる可能性
- 年金受取の開始で所得が複雑化
- 再雇用やアルバイトでさらに影響
退職前から 翌年の国保・住民税を試算しておく ことが極めて重要です。
■ 最後に:体系的な理解より「自分のケース」が大切
退職金は膨大な制度が絡み合いますが、
すべてを完全に理解する必要はありません。
大事なのは、
- どの制度に加入しているか
- 勤続年数
- 退職する時期
- 年金開始・再雇用の有無
これらを踏まえて
「自分の場合どうなるのか?」 を把握することです。
当サイトでは、退職金シミュレーターと個別記事によって
その判断をわかりやすくサポートしています。
老後の生活設計を考えるうえで、
本記事が少しでもお役に立てば幸いです。

