この本、読みました!第1回 成瀬は天下を取りにいく
書籍情報
書名:成瀬は天下を取りにいく
著者:宮島未奈
出版社:新潮社
出版時期:2023年3月
中学入試採用実績:2024年 豊島岡女子学園中・栄東中・中央大学附属中 ほか
公式紹介文(新潮社HPより引用)
中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。コロナ禍、閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。さらにはM-1に挑み、実験のため坊主頭にし、二百歳まで生きると堂々宣言。今日も全力で我が道を突き進む成瀬から、誰もが目を離せない!
受験勉強で出会った一冊が、思わぬ形で親子の会話を熱くすることがあります。
『成瀬は天下を取りにいく』は、そんな特別な一冊でした。クセの強い主人公・成瀬あかりの行動力と純粋さは、笑いと驚き、そして少しの感動をもたらしてくれます。読み進めるうちに、私と息子の間に「成瀬、すごいよね」という合言葉のようなものまで生まれました。
本を手に取ったきっかけと読書順
この作品との出会いは、2025年6月8日に行われた浜学園の公開学力テストでした。
試験問題として一部が出題されたのですが、後日解答用紙を見直してみると、驚くほど点が取れていない。ランクC(最難)には歯が立たず、ランクB(難)も大きく落とし、ランクA(易)でさえ1問落としていました。空欄も多く、そもそも物語の状況を正しく読み取れていなかったのかもしれません。
ところが、その文章を読んだ私は「これは面白い小説だ」と直感しました。繁忙期で少し間が空きましたが、6月29日に書店で購入。息子よりも先に読み終えました。
親子で読んだ感想
涙が止まらない感動…ではなく、もっとシンプルな高揚感でした。
青春や若さに対する憧れ、「若さって素晴らしい」という、胸の奥を少し熱くするような感覚です。特に第5話「レッツゴーミシガン」がお気に入りですが、最初に一気に引き込まれたのは第2話「膳所から来ました」でした。
後日、息子も本を手に取りましたが、「どの話が好き?」と尋ねても「全部好き」と抽象的な答え。私ほどの熱中度ではなかったかもしれませんが、それでも最後まで読み切った様子からは、この作品の持つ力がしっかり伝わっていたと思います。
昨日、息子が珍しく朝早く起きてきたので一緒に近所を早朝散歩したのですが、ご近所さんへ挨拶をしていたら「なんだか成瀬みたいだね」と嬉しそうでした。そういうちょっとしたことが主人公への共感に繋がっていくことがこの本の魅力でもあります。
読書を通じて感じたこと
この時点では、ここから親子読書が現在のような形に発展していくとは予想もしていませんでしたが、振り返れば、この「成瀬」がその扉を静かに開いてくれたように思います。
読書習慣のないご家庭や、小説への苦手意識がある方にこそ、ぜひ手に取ってほしい一冊です。2024年本屋大賞1位という話題性に加え、純粋に「面白い」と思える要素が詰まっています。
次回予告
次に取り上げるのは、村上雅郁さんの『きみの話を聞かせてくれよ』。
7人の主人公がそれぞれの視点で紡ぐ、中学生たちの繊細でまっすぐな思い。
思春期の入り口に立った息子が先に手に取り、父が後を追って読んだ一冊です。
親としての心構えを揺さぶられた、青春群像劇をお届けします。