この本、読みました!第6回 かなたのif

書籍情報

書名:かなたのif
著者:村上雅郁
出版社:フレーベル館
出版時期:2024年6月
中学入試採用実績:2024年出版につき出題実績発見できず。前作「きみの話を聞かせてくれよ」が20校前後で採用されたため、出題可能性が高いという説もある

公式紹介文(フレーベル館HPより引用)

 友だちのいない香奈多と、友だちをなくした瑚子。それぞれの夢と現実は重なり、ふたりの物語がつむがれる。

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出会うはずのなかった二人が、ほんの小さなきっかけで交わる――そんな瞬間から始まる物語があります。
『かなたのif』は、友だちがいない香奈多と、友だちをなくした瑚子という二人の中学生が、互いの存在によって少しずつ変わっていく姿を描きます。
孤独や迷いを抱えたまま進む日々の中で、ふと訪れる心の揺らぎや温かさ。その描写が静かに胸に残り、「もし自分だったら」と考えずにはいられません。

本を手に取ったきっかけと読書順、そして感想

この作品との出会いは、第2回で紹介した『きみの話を聞かせてくれよ』に感動したことがきっかけでした。
「また村上雅郁さんの本を読みたい」と思い、妻にお願いして図書館から借りてきてもらったのです。

私は別の本を読んでいたため、先に読み始めたのは息子。すぐに読み終えて「どうだった?」と感想を聞くと、返ってきたのは一言だけ――「よかったよ」。

その後、私も読み始めると、序盤はやや読みづらさを感じつつも、すぐに物語に引き込まれました。第1章を読み終えた時点で胸が熱くなり、思わず再び息子に感想を尋ねましたが、やはり答えは「よかった」のひとこと。

読み進めるうちに、序盤の感動とは異なる、名前のつけにくい感情が込み上げてきます。興奮とも違う、単なる感動とも違う――アラフィフの私ですらうまく言葉にできない感覚です。もしかすると、息子が「よかった」としか言わなかったのは、この感覚をうまく説明できなかったからなのかもしれません。そう考えると、息子と同じ景色を(あるいは似た景色を)共有できたことが、たまらなくうれしく感じられました。

そして終盤。別の感情が波のように押し寄せ、もうどうにも止まりません。朝、ひとりリビングで読書していたら涙がこぼれ、止まらなくなったところを妻に見つかりました。後で聞けば、妻は息子にこっそりこう伝えたそうです。
「お父さんがあの本読んで、大泣きしてたよ。本を読んで感動できるって素敵だね」

内容については触れませんが、とにかく素晴らしい一冊でした。図書館で借りて読んだ後、これは絶対に手元に置いておきたいと思い、購入を決めました。きっと何度でもページをめくりたくなる、そんな本です。