この本、読みました!第9回 ツナグ
書籍情報
書名:ツナグ
著者:辻村深月
出版社:新潮社
出版時期:2010年11月
中学入試採用実績:現時点で確認できず(未調査)。辻村深月さんは頻出作家であり、今後出題の可能性は十分にあると考えられます
公式紹介文(新潮社HPより引用)
一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者(ツナグ)」。突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員……ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。それぞれの想いをかかえた一夜の邂逅は、何をもたらすのだろうか。心の隅々に染み入る感動の連作長編小説。
本を手に取ったきっかけと読書順
この本との出会いは、私が姉に「辻村深月さんの本を持っていたら貸してほしい」とお願いしたことから始まりました。辻村さんの作品を読むのはこれが初めて。思い返せば、彼女との最初の接点は2019年公開の映画『ドラえもん のび太の月面探査記』(脚本が辻村さん)でした。しかもこれは、中国駐在時に家族3人で映画館に行き、現地で初めて観た映画でもありました。そんな記憶も重なって、自然と手が伸びた一冊でした。
読書順は、息子が先、私が後。先に読み終えた息子は「この本、良かったよ」と短く感想を述べただけ。その一言に背中を押されるように、私もページをめくり始めました。
親子で読んだ感想
当初、私は公式紹介文すら読んでいなかったため、どんな物語か全く知らないまま読み始めました。第1章を終えた時点で「生と死を深く考えさせられる話だ」と衝撃を受け、「これを小学6年生の息子に読ませたのは果たして良かったのだろうか?」と不安がよぎりました。
さらに第3章「親友の心得」を読み終えたときには、読者の心をえぐるような展開に「これはとんでもない本を息子に読ませてしまった」と激しく動揺。最後まで読み切る頃には心の動揺は少し落ち着いたものの、それでも「小学生には早すぎたかもしれない」という疑問が拭えませんでした。
そんな気持ちを正直に息子に伝えると、彼からはこんな返事が返ってきました。
「別にいいと思うよ。いつか来る話なんだし。もちろん、すぐに来たら嫌だけど」
あまりに冷静な言葉に、私は驚かされました。物語の深い部分まで読み取っていたのか、それとも自分なりに線を引いて受け止めていたのかはわかりません。けれど少なくとも「小説はフィクションであっても、人の生き死にはフィクションではない」という本質は理解していたのだと感じました。
読書を通じて感じたこと
私にとって『ツナグ』は、心を強く揺さぶられる体験でした。読後はしばらく負担感が残るほどの重みがあり、ページを閉じてからも涙がこぼれました。一方で、息子が比較的冷静に受け止めていたのが、とても対照的で面白かったのです。
貸してくれた姉に感想を尋ねると「私は電車の中で読んで号泣した」とのこと。むしろ、息子よりも姉の方が私と近い感想を持っていたのは印象的でした。おそらく年齢や人生経験によって、物語の受け止め方が大きく変わるのだと思います。