この本、読みました!第13回 成瀬は都を駆け抜ける

書籍情報

書名:成瀬は都を駆け抜ける
著者:宮島未奈
出版社:新潮社
出版時期:2025年12月
中学入試採用実績:2025年12月出版につき採用実績は無(未調査)

公式紹介文(新潮社HPより引用)

 高校を卒業し、晴れて京大生となった成瀬あかり。一世一代の恋に破れた同級生、達磨研究会なるサークル、簿記YouTuber……。新たな仲間たちと出会った成瀬の次なる目標は“京都を極める”! 一方、東京の大学へ進学した島崎みゆきのもとには成瀬から突然ある知らせが……!? 最高の主人公に訪れる、究極のハッピーエンドを見届けよ!

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本を手に取ったきっかけと読書順

息子も私も大好きな「成瀬あかりシリーズ」の完結編。発売日(2025年12月1日)に予約して購入しました。
前作『成瀬は信じた道をいく』を読み終えたときから、「次作は必ず発売日に買って読む」と決めていました。息子も「買うよね。僕も読みたい」と言っていたほどで、我が家では発売を心待ちにしていた作品です。

一方で、「こんなに多くの読者を惹きつけてきたのに第3巻で完結?」という寂しさも感じながらの読書開始でした。
けれど、読み進めるうちに「完結でいいのだ」と思うようになりました。
3冊を通じて、登場人物たちが成瀬と出会い、影響を受け、変わっていったように、私自身の気持ちも変化していったからです。
もう十分にエネルギーをもらいました。あとは、私自身の“人生という物語”をどう楽しく生きていくか――成瀬はこれからも、読者の心の中でいきいきと生き続けるのだと思います。 読み始めたのは息子が先でしたが、初日では読み終えられなかったため、2日目から私も参戦。息子が塾の宿題に取り組んでいる間に、私が先に読み終えました。

親子で読んだ感想

息子からは「“啖呵を切る”ってどういう意味?」「“実家が太い”って何?」と、作中の言葉について尋ねられました。
本を楽しみながらも、どこか受験モードを抜けきれない様子が微笑ましかったです。

作品全体を通して印象的だったのは、成瀬が進学先である京都で新しい人々と出会い、また一歩大きく成長していく姿でした。
大学生活を舞台にした人間模様は、これまで以上に多彩で、笑いあり、涙あり、そして成瀬らしさ全開。
過去作からのつながりを感じさせる場面も多く、「あの人がまた登場するのでは?」という予感が少しずつ確信に変わっていくのも嬉しい体験でした。
その瞬間ごとの小さな驚きと喜びを、ぜひ読者ご自身で味わってほしいと思います。

私自身は特に、登場人物それぞれが「自分なりの歩幅で前に進む姿」に心を打たれました。
大学生の成瀬を通じて、等身大の若者の迷いや勇気が丁寧に描かれ、
読みながら何度も「人生ってやっぱり面白い」と感じました。


読書を通じて感じたこと

作中に「みんなも成瀬が好きなんだ」という言葉があります。
まさにこのシリーズ全体を象徴する一文だと感じました。そして読者の気持ちを代弁する言葉でもあります。
成瀬と関わった人たちが変わっていったように、読者である私もまた、少しずつ前向きな気持ちに変わっていったのです。

そして、物語を読み終えたとき、私の胸に強く残ったのは――
行動すれば、思いがけない景色が見えるという思いでした。
成瀬やその周囲の人々が、偶然の出会いや小さな一歩を重ねながら未来を切り開いていく姿を見て、
人生もまた、そうした小さな行動の積み重ねで形づくられていくのだと感じました。

物語のラストで、成瀬と親友・島崎が再び言葉を交わす場面があります。
その一言一言に、これまで積み重ねてきた3冊分の時間と感情が静かに流れ込み、
「終わり」でありながら「これから」の始まりを感じさせる、実に美しい結末でした。

成瀬からは、生きることの面白さと希望を受け取りました。
完結は確かに寂しいのですが、成瀬あかりはきっと、私たち読者の中で生き続ける。
この“読後の明るさ”こそが、彼女という主人公の最大の魅力なのだと思います。

おまけ

中学受験が終わったら、森見登美彦さんの本を買ってみようと思っています。
京都を舞台にした森見作品を読んだら、息子もきっと影響を受けるでしょう。
成瀬の物語が終わっても、親子の読書旅はまだ続いていきます。