この本、読みました!特別編 太公望
書籍情報
書名:太公望
著者:宮城谷昌光
出版社:文藝春秋社
出版時期:1998年5月
中学入試採用実績:未調査
公式紹介文(書籍オビより引用)
遊牧の民の子
少年の名は“望”という。苦難の末商王朝をほろぼした人である。その波瀾の生涯を雄輝な筆でえがきつくす、全三巻。感動の歴史叙事詩!
本を手に取ったきっかけと読書順
2025年の夏休み、実家へ帰省したときのこと。
「本格的ホラーを読めるなら、歴史小説だってきっと読めるはず」――そんな思いから、私は母の書棚に並ぶ宮城谷昌光作品に目を向けました。
候補は『太公望』か『孟嘗君』。どちらも名作ですが、物語の序盤からスピード感があり、主人公の望が息子と近い年齢で描かれていることから『太公望』を選びました。母もその選択に賛同。こうして三世代を巻き込んだ読書挑戦が始まったのです。
もちろん迷いはありました。
① 歴史小説ゆえの長さ(集中力が続くか)
② 大人向けの描写をどう受け止めるか
③ もし歴史小説にハマってしまったら、受験勉強との両立は大丈夫か?
妻に相談すると「それも含めて学びだからいいんじゃない?」と背中を押され、薦める決心をしました。
息子は帰省中に冒頭を読み始め、帰宅後も一気に1巻を読了。
「続きも読む?」と聞くと、即答で「もちろん!」。その集中力に、親ながら舌を巻きました。
親子で読んだ感想
私がこの本を息子に薦めた理由のひとつは、少年・望が器の大きな漢(おとこ)たちに出会い、接することで成長していく姿を感じてほしかったからです。
息子に「お父さんはこの小説を読むたび、『肝の据わった男になりたい』と思うんだ」と伝えると、「僕もそう思う」と素直な返事が返ってきました。本当は「誰に憧れた?」と聞きたかったのですが、そこはあえて聞かず、彼の中で感じ、考えてもらうことにしました。
私が大人になってから読んだときは、望を導く大人たちの言葉に共感と憧れを抱いたものです。しかし、10代の息子には望本人の言葉こそが響いたようで、
「とにかく出てくる言葉がすごい。心が震える。ほとんどが望の言葉なんだけど」
と話していました。読む世代によって、響くポイントがまるで違うのです。
また息子は、
「歴史小説だからかわからないけれど、出会いと別れが多すぎて、突然すぎて、すごく感傷的になる」
とも語っていました。ホラー小説を通じて恐怖を味わった彼が、今度は歴史小説で「別れの重み」を知ったのです。
最後には「読んでよかった。すごく面白かった」との一言。
大人顔負けの厚い一冊を、きちんと楽しみながら読み切ったこと自体が、大きな自信につながったはずです。
読書を通じて感じたこと
私自身、この本を再読することで、読者の年齢や立場によって響く言葉が全く変わることを改めて実感しました。
10代の息子は望の言葉に心を震わせ、
アラフィフの私は望を取り巻く大人たちに憧れを抱く。
かつての私は「肝の据わった大人になりたい」と思い、今は「息子にどう向き合うか」を考える。
歴史小説は単なる物語ではなく、読み手の人生と響き合う「鏡」でもあるのだと思います。
いつか受験が終わったあとに、息子と改めて語り合いたい。
「誰に憧れた?」と、胸を張って聞ける日を楽しみにしています。
今回は、親子ともに挑戦した「本格歴史小説」ということで、特別編として記録しました。
