【中学受験、父と息子の365日戦記】第11話|8月度編③お盆の停滞と回復

お盆休み。
毎日、計算ドリルを少しでもやってくれれば…と思っていたが、現実はほとんど勉強ゼロだった。
テレビを見て、外出して、合間には本を読む。
机の上に置きっぱなしの教材に、私の視線だけが刺さる。
「このままで大丈夫なのか」
不安が胸をよぎる。
だが、息子の姿を見ていると、どこか割り切っているようでもあった。
祖母から借りた長編小説『太公望』を手にし、何時間もページをめくり続けている。
横顔には焦りはなく、むしろ落ち着きと集中が漂っていた。
ある夜、ふと息子がつぶやいた。
「残り5か月しかない」
私は思わず言い返した。
「いや、まだ5か月もあるんだ」
同じ時間を前にして、子と親でこれほど感覚が違うのか――その差に、言葉を失った。
やがてお盆が明ける。
夏期講座の疲れを引きずりながらも、息子は再び塾へ向かった。
久々の授業。
集中する横顔は、休んでいた日々がまるで嘘だったかのように、すぐに「受験生の顔」に戻っていた。 走り続けるだけでは持たない。
休むこともまた、学びの一部なのだ。
息子が選び取った“停滞”と“回復”。
それを信じて見守るのが、いまの私にできることだった。
(続く)
※この物語は全12話(随時更新)で構成されています。次話はこちら → 第12話
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