【中学受験、父と息子の365日戦記】第12話|8月度編④成長の実感と親の本音

八月の終わり。
夏期講座がすべて終了した日、息子は解放感に包まれていた。
週五日の講座、それが四週間続いた。二十コマ。
小学生には過酷なはずの時間を、彼は確かに走り切った。
「夏は受験の正念場って言うけど、そんなに大変じゃなかった」
そう豪語する息子に、思わず笑ってしまった。
疲れを隠すように強がっているのか、それとも本当に余裕があるのか。
いずれにせよ、あの二月の姿とは別人のようだった。
模試や公開テストでは、悔しさと手応えが入り混じった。
得意科目で力を出し切れたと思えば、国語や理科では苦戦もある。
判定はまだ第一志望には届かない。
けれど、悔しがる表情の奥に、成長の証が確かに見えた。
夜、机の上に教材を片づけた後、息子は一冊の本を開いた。
澤村伊智のホラー小説。
模試の疲れも見せず、ページを追う目は真剣だった。
「勉強だけの夏」ではなかった。
「読書を楽しんだ夏」でもあった。
私は思った。
もしこのまま第二志望に進むことになっても、読書を愛する少年に育ったなら、それで十分だ、と。
合格の肩書きよりも、本を読み、考え、自分の世界を広げる力の方が、何倍も価値がある。
八月は、息子にとって“自走の夏”。
そして私にとっても、“本音に気づいた夏”。
この記録を残すこと自体が、きっと我が家にとっての財産になるのだろう。
(続く)
※この物語は全15話(随時更新)で構成されています。次話はこちら → 第13話
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