【中学受験、父と息子の365日戦記】第14話|9月度後編 好調と不安の交錯

9月も半ばを過ぎたころ、思いがけない出来事が起きた。
朝起きると、私のスマホの充電が半分になっていた。おかしいと思って確認すると、夜中に息子がパスワードを解除し、ネットゲームをしていたらしい。
妻に聞くと、以前から同じような傾向があったとのこと。妻がパスワードを変えて防御したため、矛先が私のスマホに向いたのだという。
私は叱りつける代わりに、妻にしっかりと指導を任せた。
「8月の好成績で気が緩んだのだろう」
「受験のストレスがなければ、夜中にゲームをしたいなんて思わなかったかもしれない」
そう考えると、怒りよりも、複雑な思いが胸に残った。
中学受験という環境が、息子を追い詰めているのかもしれない。私が感情的になれば、むしろ悪影響になる――そんな思いが頭をよぎった。
一方で、成績はむしろ上向いていた。
公開学力テストでは過去最高の点数を出し、総合成績はクラス上位。
苦手の社会でも復習テストで初めてクラス1位を取り、帰宅後は誇らしげに報告してくれた。
「やればできるじゃないか」
そう思いつつも、私は素直に喜べなかった。
なぜなら、この3週間ほど復習テストは低調続きだったからだ。
平均点を割ることも多く、レギュラー授業での小さな積み重ねが確実に崩れていた。
ただ、9月後半になると少しずつ復調の兆しを見せ、算数や理科で久しぶりにクラス1位を取る場面もあった。
息子は10時間に及ぶ「日曜特訓(日特)」にも耐えている。
宿題は膨大でほとんど手付かずだが、長時間の授業を受けきるだけでも十分だと私は思っている。
実際、日特のテスト結果は散々だった。
それでも「長時間をやり切った」こと自体が、彼にとっては試練であり、成長なのだろう。
9月末、クラス替えの基準となる8~9月度成績表が返ってきた。
総合でクラス1位。
本来なら安心すべき数字だった。
だが、秋から追い上げてくる受験生の存在、勉強ペースが乱れる不安、体調を崩す可能性――考え始めると、まったく心は落ち着かない。
結局、親は何があっても安心できないのだ。
良い結果が出ても「次は落ちるかも」と不安になり、悪い結果が出ても「このまま下がり続けるのでは」と焦る。
「いっそ成績表なんて見なければ楽かもしれない」
そんな極端なことまで頭をよぎった。
けれど最後には、こう思い直す。
どんな結果になっても、ご縁のある学校へ行く。
その覚悟を持って、息子を温かく見守るしかないのだ、と。
(続く)
※この物語は全14話(随時更新)で構成されています。10月度編は10月末に公開予定です
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