【中学受験、父と息子の365日戦記】第3話|クラス落ち通告と「もういいかな」の気持ち

2025年3月25日、塾からの電話。
「4月からクラスがひとつ下がります」――そんな連絡だった。
私は仕事中だったが、耳の奥が熱くなったのを覚えている。
「もう1段レベルアップが必要です」「やれているとは言えません」
塾からの言葉は、冷静で的確だったけれど、鋭利な刃物のように心に刺さった。
息子は息子なりに頑張っていた。
でも、私にはわかっていた。「限界ギリギリでやっている」ということが。
これ以上は、もう無理なんじゃないか――そんな気持ちが心の底から湧き上がってきた。
「第一志望の学校じゃなくてもいいのかもしれない」
「これ以上やらせたら潰れてしまうかもしれない」
それは諦めではなく、守りたくなるほどの“弱さ”を知った父親の本音だった。
不思議だったのは、塾の先生から言われた言葉が、どれも私自身が息子に言ってきた言葉とそっくりだったことだ。
「問題を何度もやり直して、理解できるまで繰り返すことが大切です」
それを何度、自分が言っただろう。でも響かなかった。
同じことを先生から言われて、息子は「そうか」と頷いていた。
少しだけ寂しかった。
でも、逆にホッとした気持ちもあった。
親以外の言葉が、息子に届きはじめている。
それは、子どもが社会へ一歩踏み出した証かもしれない。
この頃、私はノートにこんなことを書いている。
> 「短期的な成長を求めないこと!」
その横には、こうも記してあった。
> 「これは本心ではない。本音では、早く結果が欲しい。だから書いて戒めているだけだ」
自分の欲と、子どものペースの狭間で揺れる――
中学受験の親とは、かくも面倒で、愛おしい存在だ。
(続く)
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※この物語は全8話(随時更新)で構成されています。次話はこちら → 第4話