【中学受験、父と息子の365日戦記】第24話|1月度③ 本当の戦いがはじまった

第四志望校の入試が終わり、残り期間は二週間、受験校は三校となった。
本当のラストスパートをかけるべきタイミングである。
それにもかかわらず、息子はまたしても iPod touch を探し出し、夜中にネット遊びをしていた。
プレッシャーとストレスから、やめたくてもやめられない状態になっているのかもしれない。
私と妻は、それぞれのスマホや iPad のパスコードを複雑に変更するとともに、ネットに接続できる端末をすべて家から放逐し、物理的に息子から遮断することにした。
これには息子も
「夜中にネットをやろうとしても、触れるものがないからやりようがない」
と、半ば諦めた様子だった。
その後、息子は自ら一週間分の学習計画表を作り、できたものから〇で囲むという作業を始めた。
そこには、目前に迫る第一志望から第三志望校の過去問と、その解き直しも――今更ではあるが――含まれていた。
間違えた箇所について「なぜ間違えたのか」を振り返る作業は、息子にとって決して楽しいものではない。
そのたびにやる気が削がれていく様子も見て取れた。
それでも、息子の性格を熟知し、私よりはるかに息子の扱いに慣れている妻が寄り添っていることもあり、少しずつではあるが前に進んでいるようだった。
第二志望校は、例年およそ7割が合格最低点となっている。
息子の苦手分野の確認や調子を測るにはちょうどよいと考え、妻には第二志望校の過去問を中心に勉強を組み立てるよう依頼した。
先日の一件以降、息子の勉強や姿勢に対して、私が直接指導することは控えている。
そのため、息子の様子は妻からの報告と、過去問の点数でしか分からない。
過去問の点数を見ると、合格基準点を20点以上上回ることもあれば、10点以上下回ることもある。
特に得意科目である国語のブレが大きい。
妻に話を聞いてみると、
「集中力がまったくないときもあるし、時にはウトウトしているようなときもある。
でも、常にそういうわけでもなく、ものすごく集中しているときもある」
とのことだった。
集中力が切れると寝室にこもろうとするため、
「集中できないなら、外を走ってこい!」
と言い放っているらしい。
このあたりの息子の扱いは、私より妻の方がはるかに適切である。
息子自身も、本気で頑張らなければならない時期に来ていることは分かっているようだった。
時折、妻に甘えながらも、自分で立てた計画通りに勉強を進めようと試行錯誤している。
半月前まで溜まりに溜まっていた計算ドリル(計算&小問完全マスター)の“借金返済”を終え、現在は毎日着実に消化していることからも、それは明らかだった。
こうした状況の中で、父親としてどのように息子を支えるべきか思い悩んでいた私に、妻はこう言った。
「全面的に指導するでもなく、完全に手放すでもなく、
頑張っている息子を見守り、時に励まし、時に叱りながら、受験が終わるまで過ごせばいい。
こういう性格の子なのだから、中学に進学してからも、しばらくは親のサポートが必要になる。
何年かかけて、少しずつ親の手を離れていけばいい」
その言葉に、私は素直に納得した。
第三志望校の入試前日も、息子は学習計画表に従って勉強をしていた。
しかし夜になると、緊張と興奮からか、まったく落ち着きがなくなり、家の中を歩き回り始めた。
さらには不安全行動まで見せ始めたため、私が雷を落とすことになった。
親が落ち着くための方法をいくつも提示しているのに、それをしようとしない息子。
前日にもかかわらず、激しく叱ってしまう父親。
どちらも、本当に未熟である。
結局、父子ともにそれぞれの行動を反省し、一緒に風呂に入りながら話をした。
そのおかげもあって、就寝時には二人とも落ち着くことができた。
そして1月24日、第三志望校の入試当日。
朝から家族全員が落ち着いて出発の準備をし、予定より数分早く行動できたこともあり、非常にスムーズに試験会場へ入ることができた。
会場へ向かう地下鉄の車内では、他の受験生が落ち着かない様子で参考書を読んだり、親に話しかけたりしている中、息子は居眠りをしていた。
息子らしさ全開である。
その様子を見て、私は
「よし。今日の息子は大丈夫だ」
と確信した。
入試後、息子に手応えを尋ねると、
「全力を出し切れた。問題は全部解けたし、スカラー(奨学生)合格もいける」
と、自信満々だった。
この学校のスカラー合格は、上位15%に入らなければならず、決して簡単なものではない。
それに、息子の自己申告が当てにならないことも、これまでの経験で分かっている。
それでも、ここにきて全力を出し切れたこと、調子を上げてきたことは、親として大きな手応えだった。
翌週に控える第一志望、第二志望校の入試へ向けて弾みをつけることができたし、
「甘えん坊の息子を、この学校でビシバシしごいてほしい」
と、ひそかに願っている私にとっては、むしろ好都合でもあった。
そして合格発表――。
結果は、息子の宣言通りスカラー(奨学生)合格だった。
しかも、そのラインを20点以上上回っての合格である。
内訳を見ると、算数は7割と伸び悩んだものの、得意の国語は8割を取り、理科に至っては受験生の最高得点に迫る勢いだった。
もともと試験での勝負強さは持っていたし、集中力を発揮する瞬間もあった。
それでも、今回は想像以上だった。
本人も大いに喜んでいる。
最終決戦に向け、ベストに近い状態まで持ってこられていることを、親子で確認できた。
しかし、最後の一週間を楽に過ごせるほど、中学受験は甘くない。
それを、この後、知ることになる……。
(続く)
※この物語は随時更新しています。次回は2月初旬公開予定です
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