三国志14をやろうと思ったら、なぜか資格試験向けゲームを作っていた話
前回の記事で書いたとおり、初めてのプロンプト開発は地獄だった。
「20時間ぐらいで完成します。」
と言われて始めたはずが、終わってみれば40~50時間。チャットだけが増殖し、最後はChatGPTに向かって「お前、プロジェクト管理できてないだろう」と説教する始末である。
販売ページも完成した。
製作記事も書いた。
ようやく、本当に終わった。
「さあ、三國志14でもやるか。」
私は机の横に積んであった三國志14の箱を手に取った。
その前に、操作方法ぐらい見ておこう。
そう思ってYouTubeで初心者向けの解説動画を再生する。
30分ほど見終えた感想は、
「この年で新しいゲームを覚えるのは、なかなか難しそうだな……。」
だった。
今日はやめておこう。
そう思ってしまったのが運の尽きである。
夕食を食べ終え、何気なくChatGPTを開いてしまった。
「世の中では、どんなプロンプトが売られているんだろう。」
「私が見て『これは面白い』『真似はできないけど発想がすごい』と思うようなものを探して。」
そんな感じで頼んでみた。
ところが、並んできた商品がどうにもピンと来ない。
リストの中に、「家庭教師AI」というものがあった。
その瞬間だった。
「あ。」
と思った。
学校のテストをAIへ提出すると、AIキャラとの距離が少しずつ縮まっていく。
勉強を続ける理由になる。
昔の恋愛ゲームみたいなものが作れるかもしれない。
私は「ときめきメモリアル」はやったことがない。
しかし別の恋愛ゲームなら遊んだことがある。
最近のゲームはCGが美しいのだろうが、私の世代はテキスト中心だった。
文章を読みながら、自分の頭の中で勝手に主人公やヒロインを動かす。
あの「妄想する余地」が好きだった。
昨年読んだ『成瀬は天下を取りにいく』シリーズも同じである。
成瀬のイラストは表紙ぐらいしかない。
それでも私の頭の中では、成瀬が勝手にしゃべり、歩き、仁王立ちしている。
人間の想像力というのは案外すごい。
だったら、AIが毎日少しずつ反応を変えていくだけでも、ユーザーは十分楽しめるんじゃないか。
「これは面白い。」
そう思った。
……五分後。
「待てよ。」
私は未成年にChatGPTを使わせることに反対だった。
企画、終了である。
発想だけ残した
企画は5分でボツになった。
しかし、「勉強を続けるほどAIとの関係が変わる」という発想だけは捨てるには惜しかった。
対象を資格試験の受験生へ変える。
恋愛ゲームではなく、勉強を続けるほどAIキャラの応援の仕方が変わっていくゲーム。
それなら成立しそうだ。
この時点で、頭の中にはもう完成形がぼんやり見えていた。
だから今回はChatGPTへ相談しすぎないことにした。
前回、それで痛い目を見ている。
仕様の話を始めると、AIはすぐ横道へ逸れる。
「その前に別のプロジェクトを作りましょう。」
「プロンプトを標準化しましょう。」
「こちらの方が近道です。」
……その結果が、前回の記事である。
今回は同じ轍は踏まない。
私はChatGPTへ、
「仕様として決めておくべき項目だけ列挙して。説明は不要。」
とだけ伝えた。
一覧が表示されたところでPCを閉じる。
ここから先は、人間の仕事だった。
今回、一番活躍したのはChatGPTではない。
白いコピー用紙である。

ボールペンを持ち、頭の中に浮かんでいるものを片っ端から書いていく。
AIキャラ。
ゲームモード。
勉強履歴。
イベント。
コメント。
ごちゃごちゃで構わない。
丸を書く。
線を引く。
矢印を書く。
さらに思いついたことを書き足す。
ボールペンだから消せない。
もっとも、消すつもりもない。
頭の中にあるものを紙へ吐き出しながら、新しいアイディアも同時に生まれてくる。
あとから見返すと、自分でも読めないぐらいの字があちこちにあった。
それでもいい。
自分だけ読めれば十分である。
気付けば1時間ほど経っていた。
前回はAIとの会話で頭の中をかき回され続けた。
今回は違う。
頭の中が一番忙しかったのは、この白い紙に向かっていた1時間だった。
今回のAIは約束を守った
ラフ仕様をテキストへまとめ、ChatGPTへ投入する。
その前に、こちらから条件を付けた。
「残り5時間で完成させること。」
「チャットは増やさないこと。」
「途中で仕様変更しないこと。」
前回の反省を全部盛り込んだ。
正直、信用はしていなかった。
前回も「改善案があります」と言っては話を横道へ逸らし、気付けばチャットだけが増殖していたからである。
ところが今回は違った。
仕様書は約1時間半で完成し、さらに30分ほどでプロンプトまで完成した。
しかもAIの方から、
「これ以降、仕様変更はしない。」
と宣言してきた。
ホントかよ。
またいつもの話だろう、と思った。
もっとも今回は、前回とは少し様子が違う。
前回のAIは終始敬語だったのに、今回はなぜか最初からタメ口である。
「お前、急に距離近いな。」
内心そう思いながら会話していた。
敬語で話せよ、と少しイラッとしたのも事実である。
ただ、前回とは別人格のAIだと思えば妙に納得もいく。
……もしかすると、本当に約束を守るのかもしれない。
結果的に、このAIは約束を守った。
テストのためにチャットは増えたものの、企画や開発では増えなかった。
前回とは別AIと言っていいぐらい、仕事は速かった。
地獄のテスト
プロンプトは完成した。
ここからはテストである。
前回の税務コラムAIでも散々テストをやったので、ある程度の覚悟はしていた。
ただ、今回は一つだけ事情が違う。
どうしても残したかった機能があった。
勉強を続けるほど、AIキャラの反応が少しずつ変化していく機能である。
当初は恋愛ゲームをイメージしていた名残だ。
資格試験向けへ方向転換したことで、「恋愛」ではなく「応援」に置き換えたが、勉強を続けるほど関係性が変化していくという考え方だけは最後まで残した。
当然、このテストをするには、毎日勉強したことを入力しなければならない。
私は本棚からTAC出版の『法人税法 理論マスター』を取り出した。
第1章は「総則等」。
「納税義務者」「課税所得等の範囲」──受験生だった頃、何度も何度も繰り返し読んだページである。
税理士試験を受けていた頃は、自分が合格するために読んでいた。
その本を、10年ぶりにまた開いている。
今は……
何をやっているんだ?
いや、考えている場合ではない。
AIキャラとの距離が本当に変化するのか確認するには、とにかく前へ進めるしかない。
理論を1ページ読む。
勉強した内容を入力する。
また1ページ読む。
また入力する。
そうやってゲームを進めていった。
「勉強じゃなくても適当に入力すればいいじゃないか。」
と思ったあなたは甘い。
勉強以外のことを書くと、
「勉強した内容を教えてね。」
と聞き返す仕様なのである。
誰だ、こんな面倒な仕様を考えたのは。
私だった。
最初のうちは、それほど気にならなかった。
資格試験向けのゲームなのだから、AIキャラとの距離がゆっくり縮まるよう設計してあっても不思議ではない。
むしろ、そのぐらいの方が自然だろう。
5日。
特に変化なし。
10日。
まだ変わらない。
15日。
「そろそろ何かあってもいい頃じゃないか。」
そう思い始めた。
20日。
やっぱり変わらない。
……あ、これバグだ。
AIキャラに嫌われていたわけではない。
単純に、距離が変化しないバグだったのである。
デバッグモードを実装し、原因を調べ、修正して、もう一度試験をやり直す。
テストの直前までが驚くほど順調だっただけに、このバグだけは本当に堪えた。
今度は別の地獄だった
ようやくテストが終わった。
これで完成──ではない。
販売用の商品に仕上げなければならない。
テスト版のプロンプトを新しいチャットへ投入し、販売版へ統合する。
ここでまた問題が起きた。
統合してくれないのである。
どうやらデータ量が大きすぎたらしく、統合ではなく要約してしまうようだった。
私はメインのチャットへ戻り、
「こういうエラーが出た。」
と相談する。返ってきた解決策をコピーし、販売版を作っているチャットへ貼り付ける。
「できません。」
またメインへ戻る。
相談する。
コピーする。
貼り付ける。
「できません。」
……
気付けば私は、AI同士の伝書鳩をやっていた。

前回はチャットだけが増殖した。
今回はチャット同士の会話を、人間が仲介している。
何だ、この仕事は。
結局、最後はWordを開き、自分の手でファイルを統合した。
販売版を作る作業の中で、この時間が一番イライラした。
AIは万能・・・かもしれないが少なくともこの日は、私の方がWordを使うのは上手だった。
一番驚いたのは最後だった
販売版の統合も終わり、利用者向けの説明書や起動用プロンプトも完成した。
ここまで来ると、もうほとんど商品である。
最後にChatGPTへ一つだけお願いをした。
「ゲームソフトみたいなパッケージ画像を作って。」
その前に、最近の恋愛ゲームのパッケージをネットでいくつか調べてみた。
ところが、どうにもピンと来ない。
「こんな感じかなぁ。」と思うものはあっても、「これだ。」というものが見つからなかった。
だったら、とりあえずAIに作らせてみよう。
正直、それほど期待はしていなかった。ところが、一発目で出てきた画像を見て、
「すげえ。」
と思った。
私の頭の中にぼんやり浮かんでいたものが、そのまま画面に出てきたような感覚だった。

もちろん細かな修正は何度かお願いした。
説明文を変えたり、ロゴっぽいものを調整したりと、細部には手を入れている。
それでも、最初に出てきた一枚を見た時の衝撃は大きかった。
さらに、「どうせ説明書なんて読まないだろう。」という前提で、説明書代わりになる一枚絵も作った。
ゲームソフトの裏箱のように、機能や使い方が一目で分かる画像である。
文字ばかりの説明書より、こちらの方がずっと伝わる。
こうして、「資格試験パートナーAI」はようやく完成した。
今度こそ三國志14を……
着手から完成まで、およそ10時間。
前回の40~50時間を思えば、ずいぶん短かった。
もちろん途中では、理論マスターを片手にゲームのテストをしたり、AI同士の伝書鳩になったり、販売版の統合で頭を抱えたりもした。
それでも今回は、「もうやめたい。」と思うことは一度もなかった。
むしろ、夏休みの自由研究をやり終えたような達成感の方が大きかった。
そして三國志14はというと──
まだ開封すらしていない。
本気で健康のことを考えるなら、次の連休こそはChatGPTを開かず、三國志14をやった方がいいな。うん、間違いない。
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