海外で売れているプロンプトを、1,700円で買ってみた

MKは副業をしている。
本業は会社員だが、2024年に税理士登録し、少ないながらも税理士として売上を得るようになった。
ただ、これからやってみたいのは税理士業だけではない。この「MKのリアルブログ」を中心に、AIを使って副業の範囲を広げてみたいと考えている。
AIを活用すれば、本業や家庭生活を圧迫するほどの負担を抱えなくても、誰かの役に立つ商品やサービスを個人で作り、副業として成立させることができるのではないか。
それを実際に証明するため、一つのプロジェクトを立ち上げた。
Undercover Tax Accountant――覆面税理士。
軍資金は毎月1万円。狙う売上は10万円、うまくいけば50万円である。
何を売るのか。途中で何が起きるのか。そもそも1円でも売れるのか。そして、この企画がいつまで続くのか。
この時点では、MKにも相棒のAIにも分かっていない。
最初の商品候補
最初に目をつけたのは、プロンプトだった。
プロンプトとは、ChatGPTなどの生成AIに「何をしてほしいのか」を伝える指示文である。
MKはこれまで、ブログ記事を作るためのAIをはじめ、いくつものプロンプトを自作してきた。しかし、他人が作ったプロンプトに金を払ったことは一度もない。
MKとAIは、プロンプトが実際に売買されている場所を探し始めた。

MK
「自分で作ったものしか知らないのに、『これは売れる』とか『いくらなら売れる』と考えても仕方ないと思ったんですよ。
だったら実際に売られているものを、自分のお金で買ってみようと。
他人が作ったものと自分のものは何が違うのか、何か学べるところはないのか。それを見てみたかったんです」
売り場を見つけたら、まだ建設途中だった
最初に見つけたのは「proma」という日本のプロンプト販売サイトだった。
個人が作ったプロンプトを商品として出品し、それを欲しい人が購入するためのサイトである。商品ページには価格が表示され、売れ筋ランキングや購入数、評価も見ることができる。
MKとAIが探していた「日本で実際にプロンプトが売られている場所」に見えた。
研究用に一本買ってみることにした。
MKはクレジットカードを手元に置き、商品ページの購入ボタンを押した。しかし決済画面へは進まず、「このプロンプトは現在購入できません。クリエイターの決済設定が未完了です」と表示された。
出品者側の設定の問題だろうか。
MKは別の商品を開いて購入を試したが、やはり同じメッセージが表示された。さらに別の商品でも購入できない。
そこで二人は商品探しを中断し、promaそのものを調べ直した。
当時掲載されていた商品は129。そのうち103商品が一般の出品者ではなく、運営側によるものだった。サービス自体も2026年5月に正式スタートしたばかりである。
商品には値段がつき、ランキングもある。しかし二人が「すでに多くの出品者と購入者が取引している市場」だと思って入った場所は、運営側が自ら商品を並べながら市場を作っている途中だった。
売り場を見つけたと思ったら、まだ建設途中だったのである。
日本で買えないなら__と、海外を探すことになった。
海外では、本当に売っていた
次にたどり着いたのが「PromptBase」だった。
世界中のクリエイターが作ったプロンプトを売買する海外のマーケットである。
商品一覧にはサンプル画像と価格が並んでいる。商品ページを開けば、どのAIで使うものなのか、どんな結果を得るためのプロンプトなのかを確認できる。
画像生成、文章作成、マーケティング、ビジネスなど用途も幅広く、数ドル、十数ドルという値札のついたプロンプトが大量に並んでいた。
先ほどのpromaとは違い、実際に購入できる商品を探せそうだった。
MKはAIに、研究用として買うプロンプトを探させた。条件は、普段使っているChatGPT用であること。そして、自分たちがこれまで作ってきたプロンプトと比較できること。
AIがPromptBaseの商品を調べて見つけてきたのが、
「Prompt Milker」
だった。
「Token size:257」
Prompt Milkerは、自分がすでに持っているプロンプトを読み込ませ、その内容を分析して改善するための商品だった。
価格は9.99ドル。商品ページには「Top Seller」の表示があり、評価は4.7。そして、もう一つ「Token size:257」と記載されていた。
トークンとはAIが文章を処理するときの単位で、単純に文字数へ置き換えることはできない(※注 単語数で201だった)。ただ、257トークンなら商品本体がかなり短いことは分かる。
MKが普段使っている自作プロンプトには、Wordで何十ページにもなるものもある。それと比較すると、257という数字はかなり小さい。
購入前、AIはむしろそこに興味を持った。これほど短いものが商品として売られ、「Top Seller」と表示されている。短い文章の中に、自分たちが知らない工夫が入っているのではないか。
価格は9.99ドル、日本円で約1,700円。
MKはクレジットカードで決済した。月1万円の軍資金から、最初の1,700円が出ていった。
決済が終わると、それまで購入者には見えなかった商品本体が画面に表示された。
「Token size:257」の表示どおり、Prompt Milkerは短いプロンプトだった。購入前にAIが想像していたような、短い文章の中に複雑な仕組みを詰め込んだものではなく、内容もシンプルだった。
MKはその全文をコピーし、AIとのチャットへ戻った。
「買ってきた。結構、衝撃」
現物を読んだAIも、自分が購入前に想像していたものとは違ったことを認めた。

MK
プロンプトを見たときは驚きましたよ。「たったこれだけ?」と。
でも、1,700円を損したとは全然思わなかったんです。むしろ安かった。
本場で実際に売られているプロンプトを、自分でお金を払って買って、その中身を見ることができた。それが目的でしたから。
ただ、現物を見たことで別のことも分かりました。これを作った人が何時間かけたのか、どれだけ試行錯誤したのかは、買った側には見えないんですよね。
購入後に目の前に出てくる商品は、この短い文章だけなんです。
次に何を売るのか
MKは、ゲームソフトを例に挙げた。
MK
ゲームなら、お金を出して買う人はたくさんいますよね。でも、そのゲームを動かしているプログラムの文字列そのものを欲しがる人は、ほとんどいないと思うんです。
欲しいのはプログラムじゃなくて、それを動かして遊べるゲームでしょう。AIも同じじゃないかと。
プロンプトという文字列そのものではなくて、それを使うことで何ができるのか。そっちを商品にした方がいいんじゃないかと思いました。
その結果、第1号の商品候補が変わった。
プロンプトそのものではなく、プロンプトによって動く「AIソフト」として売ってみる。
まだ商品はない。売上も0円である。月1万円の軍資金は、8,300円になった。
Undercover Tax Accountant。
最初の1,700円を使ったところで、ようやく第1号の商品作りが始まる。
