東海中高365日戦記 2026年5月の記録

この連載は、東海中高に通う息子について、父親である私から見えた範囲を記録するものである。
家庭で見える姿、学校で見せる姿、部活動で見せる姿、友人と過ごす姿。それらは必ずしも同じではない。中学生ともなれば、親が知ることのできる世界は急速に狭くなっていく。
ここに書かれていることは息子の全体像ではなく、家庭という限られた場所から見えた一つの側面に過ぎない。それでも未来の自分と家族のために、月に一度記録を残していこうと思う。

入部

5月になり、息子は正式に部活動へ入部した。

この部では、腕立て伏せを連続50回できるようになるまでは矢を打たせてもらえないらしい。実際には7月に実施される安全講習の受講も必要とのことだが、とにかく入部したからといってすぐに弓を持たせてもらえるわけではないようだ。
体験入部の際には実際に矢を打たせてもらったようだが、本入部後は筋力トレーニングとゴムチューブを使った基礎練習の繰り返しとのことである。
さらに、小学校時代には大嫌いだったシャトルランもやっているらしい。

4月に入部承諾書へサインするとき、私は本人に
「本気でやるつもりなのか」
と確認した。

もちろん反対するつもりはなかったが、正直なところ、
「どこまで続けられるのだろう」
という気持ちはあった。

腕立て伏せ50回という条件も、息子にとっては相当高いハードルに思えた。
受験期に一度やらせたことがあったが、確か3回もできなかった記憶がある。

ところが親の予想は見事に外れた。
息子は毎日部活動へ通い、
「今日は30回できた」
「非公式だけど50回できた」
「毎日筋トレしているから体が痛い」
などと時々話してくれる。
そして5月中には正式に50回を達成したらしい。

基礎練習も段階を上げながら進んでいるようである。
おそらく、一日でも早く弓を引きたい、一日でも早く矢を打ちたい、その一心なのだろう。

5月末には部活動の保護者会があった。
そこで同級生のお母さんと話をする機会があったのだが、

「今まで運動なんてしてこなかったのに、夢中でやっています」
「家でもゴムチューブを引いています」

とのことだった。
どうやら我が家だけの話ではないらしい。

やりたいことが明確である。
目指すものが明確である。
そこへ至るためのステップも明確である。

ただそれだけで、子どもは親が想像していた以上の力を発揮する。
そんなことを考えさせられた1か月だった。

父母懇談会への参加

東海中高にはPTAとは別に、父母懇談会(通称「父母懇」)という組織がある。
学校全体の会だけでなく、地域ごとの会も存在する。
名古屋市内であれば区単位、市外であればもう少し広い地域単位で活動しているようだ。

5月に行われた会では、この春に東海高校を卒業した卒業生とその保護者がパネリストとして登壇し、新入生の父母へ向けて経験談を語る企画が行われた。
印象に残った話をいくつか挙げる。

卒業生からは、

  • 東海で得られる最大の宝は友人である
  • 中学時代は勉強より部活や委員会活動に力を入れるのがよい
  • 勉強は授業を聞いていれば何とかなる
  • 受験勉強は必要な時期になれば誰もが自然と始める
  • 親に感謝しているのは、何も言わず見守ってくれたことと毎日お弁当を作ってくれたこと

という話があった。

一方、保護者からは、

  • 息子が何かに夢中になっていることは分かる
  • しかし詳しいことまでは分からない
  • 親が何か言ったところで息子は変わらない
  • 東海生の親の驚くべきところは、思春期の息子のことを臆面もなく「大好き」と言えること

という話があった。

会場では笑いが起きていたが、私は妙に納得してしまった。
父母懇をはじめ、東海中高には保護者が関わる活動が非常に多い。
学校行事や部活動へのサポートも盛んである。

そして皆、その活動に対して驚くほど熱心である。
なぜそこまで熱量が高いのか。
その理由が少し分かった気がした。

皆、自分の息子が大好きなのだ。

しかし一方で、息子の活動をすべて把握することはできない。
直接関与することもできない。
むしろ、それは望ましいことですらないのかもしれない。
息子自身がそれを望んでいないからである。

では親は何をするのか。

学校を支援する。
部活動を支援する。
後輩の保護者を支援する。
あるいは父母懇のサークル活動など、自分自身の活動を見つける。

そうやって保護者は保護者なりに、中学受験後の新しい役割を見つけていくのだろう。

我が家の中学受験期間は1年ほどだった。
しかし一般的には2年、3年と受験に向き合ってきた家庭も多い。
これまで子どもへ向けてきたエネルギーの行き先を探しながら、親は親で「子離れ」という課題に向き合っているのかもしれない。
そんなことを考えた。

中間考査 ~はじめてのテスト~

5月20日から3日間、中間考査が行われた。
東海中へ入学して最初の定期テストである。

息子は学校では部活動、自宅ではゲームに熱中しており、自宅学習をする様子は相変わらず見られなかった。
さすがにテスト前なので、妻が
「このまま勉強せずにテストを受けるのか?」
と声をかけていた。

すると息子は、申し訳程度にプリントを眺め、
「よし、勉強した!」
と言い放った。

私には到底そうは見えなかったが、本人は本気でそう思っていたのかもしれない。
私は特に何も言わなかった。
親がどれだけ言っても、自分で必要性を感じなければ行動は変わらないと思っているからである。

むしろ中学生のうちに小さな失敗を経験することは、長い目で見れば悪いことではない。
高校受験がない環境だからこそ、失敗から学べることもあるだろう。

4月の段階で息子とは、
「成績が上位8割に入らなければスマホを取り上げる」
という約束をしていた。

もっとも親族からは、
「上位8割は甘すぎる」
と苦笑いされていたのだが。

テストから1週間ほど経って結果が返ってきた。
総合順位は発表されなかったものの、各教科の得点分布や平均点からおおよその位置は分かる。

結果はと言うと、
1科目だけ少々残念なものがあったが、全体としては特に問題のない内容だった。

スマホ没収には至らない。
少し拍子抜けした。

もちろん悪い成績を取ってほしいわけではない。
ただ、失敗から学ぶ機会も大切だと思っているのである。

もっとも今回は中間考査であり、科目数も少ない。
今回はテストがなかった理科(地学・生物)も次回は加わる。
これから先、試行錯誤する機会はいくらでもあるだろう。
親としては焦らず見守るしかない。

東海は放任主義なのか? ~現時点でのMKの印象~

5月末の部活動保護者会で、顧問の先生のお話が印象に残った。

要旨としては、

  • 東海の授業は非常にハイレベルである
  • それを毎日6時間受ければ頭は疲れる
  • 部活動も決して楽ではない
  • 多くの生徒は長時間通学をしている
  • その上で予習復習もしてほしい(笑)
  • だから塾を重ねる必要は基本的にない
  • ゲームや漫画やテレビも生徒にとって必要な息抜きである

という内容だった。

私はなるほどと思った。
前提が違うのである。

東海は決して勉強を軽視しているわけではない。
むしろ授業そのものに相当な負荷をかけている。

授業に集中し、そこで学び取ることを前提としている。
それでも足りなければ、自分で予習復習をする。
そういう考え方なのだろう。

私は中学受験の勉強を通じて、東海中へ入学する生徒たちがどのような競争を勝ち抜いてきたかを見てきた。
その生徒たちに必要なのは、さらに勉強時間だけを積み増すことではないのかもしれない。

部活動。
友人関係。
読書。
趣味。
遊び。

そういったものも含めて人間としての土台を広げていく。
そして将来、自分自身が

「もっと勉強したい」
「この目標を達成したい」

と思った時に力を発揮できる人間になる。
そういう教育観があるように感じた。

もちろん、まだ入学して2か月である。
私の理解が正しいかどうかは分からない。

しかし少なくとも現時点では、

「放任主義」

というより、

「信頼して任せる教育」

に近いように思えた。

そして私は今月もまた、自分にできることは口を出すことではなく、見守ることなのだろうと感じたのである。