東海中高365日戦記 2026年4月の記録

この連載は、東海中高に通う息子について、父親である私から見えた範囲を記録するものである。
家庭で見える姿、学校で見せる姿、部活動で見せる姿、友人と過ごす姿。それらは必ずしも同じではない。中学生ともなれば、親が知ることのできる世界は急速に狭くなっていく。
ここに書かれていることは息子の全体像ではなく、家庭という限られた場所から見えた一つの側面に過ぎない。それでも未来の自分と家族のために、月に一度記録を残していこうと思う。

入学式

東海中学の入学式は4月1日である。

校門で記念撮影をするため、家族で勇んで集合時間より1時間以上前に到着したものの、さすがに早すぎたようで人はまばらだった。
しばらく待った後、定刻に貼り出された学級割を確認し、息子とはそこで別れた。私と妻は保護者として講堂へ向かった。

講堂に入ると、吹奏楽部とオーケストラ部が演奏の準備をしていた。
やがて新入生たちが入場してきた。
息子も含め、その姿はまだ「学生服を着た小学生」である。つい2か月前までランドセルを背負っていたのだから当然なのだが、中学生というよりは小学生の延長線上に見えた。

一方で、演奏を担当する上級生たちはまるで別世界の人間だった。
姿勢は堂々としており、落ち着きがあり、実に凛々しい。
同じ学校の生徒とは思えないほどの差である。
しかし逆に言えば、数年後には我が息子もあちら側にいるのだろう。

「1年か2年もすれば、あんな風になるのかな」
そんな期待が自然と湧いてきた。

合唱部員による校歌と「月影」の合唱も見事だった。
堂々とした歌声が講堂に響く。

「さすがにここまで堂々とできるようにはならないかもしれないな」
と思いつつ、
「合唱部に入らないかな」
などと勝手な期待もしていた。

入学式の後は各教室へ移動した。
教室の後方から担任の先生のお話を聞きながら、息子の様子を眺める。

つい先日まで中学受験に向けて親子で必死になっていたはずなのに、今はもう東海中の新入生としてそこに座っている。
当たり前のことだが、中学受験は終わったのだ。
この日、改めてそれを実感した。

部活選び

4月11日は土曜日だったが、「中1オリエンテーション」があるため息子は登校していった。
主な内容は部活動紹介である。

東海中高には40を超える部活動・同好会があり、兼部も認められている。
帰宅した息子によれば、
「昔、5つ兼部していた伝説の先輩がいるらしい」
とのことだった。

そして、
「僕も4つぐらい兼部しようかな」
と言う。

私と妻の予想では、本命は数学研究部であった。
そこにそれぞれの勝手な希望として、私は合唱部、妻は園芸部を挙げていた。

また、中学受験期に陸上競技を題材とした小説を好んで読んでいたことから、陸上競技部もいいなと思っていた。
もっとも、どれも親の勝手な予想や願望である。

実際にどの部を選ぶかは本人次第だ。

ところが最終候補として挙げた4つのうち、なんと3つが運動部だった。
私も妻も驚いた。

息子は小学校時代、特別に運動へ打ち込んだ経験がない。
習い事として水泳教室へ通ったことはあるが、それも5年生からの2年間だけである。
そんな息子が運動部を志望するとは思っていなかった。

数日後、息子は入部承諾書を持ってきた。
最終的に選んだのは、弓を使う競技の部活動だった。

そして、
「中学時代をこの部活に捧げる」
と言った。

親としては少々大げさにも聞こえる。
しかし本人は真剣そのものだった。
私自身、その競技について詳しいわけではない。
実際にやったこともない。
ただ、集中して的を狙い、それが思い通りの結果につながったときの高揚感には独特の魅力があるのだろうと思う。
その魅力が息子を惹きつけたのかもしれない。

もっとも、その時点では私には何も分からなかった。
分からないなら分からないなりに応援するしかない。
入部承諾書にサインをしながら、
「さて、どんな中学生活になるのだろう」
と思った。

勉強しない。でも本は読んでいる

学校から配られた「学園生活のしおり」や各種資料には、
東海中の授業は進度が速く内容も深いこと、
そのため予習復習をしっかり行うこと、
といった趣旨のことが繰り返し書かれていた。

ところが息子はと言うと、自宅で勉強している様子がまったくない。
本当にまったくない。
2月1日に中学受験を終えて以来、自宅学習らしいことは一切していないのではないかと思う。

元々、東海中に入れるかどうかというレベルで受験を戦ってきた息子である。
これから先の学習を考えれば、人並み以上の努力が必要になるかもしれない。
親として不安がないと言えば嘘になる。

いわゆる「深海魚」という言葉が頭をよぎることもある。
しかしその一方で、息子は授業後に図書館へ立ち寄り、本を借りて読んでいるようだった。

最初のうちは以前から好きだった星新一さんの小説ばかりである。
ところがそのうち、湊かなえさんの作品も読んでいることが分かってきた。
しかも、どうも私から隠れるようにしているらしい。

別に隠さなくてもいいのに、と思う。
以前私が『告白』を読ませたことを少し後悔している、と話したことを気にしているのかもしれない。
もっとも、それも私の想像に過ぎない。
誰の本を何冊読んだのか、私は聞かないし、息子もあまり語らない。
ただ、本が次々と入れ替わっていく様子を見る限り、4月だけで10冊以上は読んでいるようだった。

勉強はしない。
ゲームはする。
しかし本は読んでいる。
そして部活動体験にも積極的に参加している。

その姿を見ているうちに、
「今はこれでいいのかもしれない」
と思うようになった。

受験が終わってまだ2か月である。
勉強については、そのうち本人が必要だと思ったときに考えればいい。
少なくとも4月の段階では、私から何か言うつもりはなかった。

東海中に入学して最初の1か月。
親として見えていたのは、勉強している姿ではなかった。
新しい学校に通い、新しい部活動に興味を持ち、本を読みながら少しずつ生活のリズムを作っていく息子の姿だった。

※次月はこちら→2026年5月の記録