売上ゼロなので、AIとマルシェに出店することにした


ココナラで第1号商品「副業のお金『お悩みはっきりくん』」を発売したMKだったが、売上はゼロだった。
MKとAIはその後もココナラでの販売状況を見守ったが、やはり売れる気配はなかった。

MKとAIはどこに問題があったかの検討を始めたところ、ここまでのプロジェクトが、すべてパソコンの画面の中だけで進んでいることにあるのではないかと考えた。

「我々には現地現物が足りない」

商品を考える相手はAI、ソフトを作る相手もAI、価格を相談する相手もAIである。ココナラへ出品した後も、画面を見ながらAIと市場を調べ、次の商品をどうするか話していた。
そこでMKとAIの間に出てきた言葉が、「現地現物」だった。

※「現地現物」とは、実際に現場へ足を運び、現物を自分の目で見て事実を確認するという考え方。製造業などでよく使われる言葉です。

ネット上に商品を置いて客を待っていても反応がないのであれば、今度はこちらから客のいる場所へ行ってみる。
ノートパソコンに「お悩みはっきりくん」を入れて持っていけば、その場で実際に動かして見せることもできる。

とはいえ、売上ゼロの商品を抱えていきなり店舗を構えるわけにもいかない。
MKとAIが探し始めたのは、個人でも一日だけ参加でき、ノートパソコンを持ち込んでサービスを実演できるような場所だった。

その条件に当てはまったのが、マルシェである。

調べていくと、10月4日に安城市のアンフォーレで開催される「CorSanaフェスティバル」が見つかった。
JR安城駅から徒歩で行くことができ、開催時間は6時間。同じフロアには、施術、占い、カウンセリングなどのブースも並ぶ。

出店者の顔ぶれを見ると、MKとAIには「お悩みはっきりくん」との接点が二つあるように見えた。

一つは、相談に来る客である。占いやカウンセリングには、何らかの悩みを抱えた人がやって来る。
「お悩みはっきりくん」も、副業のお金について何に悩んでいるのかをAIとの対話で整理するソフトなので、扱う内容こそ違うものの、「悩みを抱えた人が相談する」という点では共通している。
もう一つは、相談を受ける側だった。占いやカウンセリング、施術などを自分で提供している出店者は、それを本業にしているのか副業なのかは分からないが、少なくとも自分のサービスで収入を得ている。そういう人たちなら、「副業のお金」を扱うソフトにも何らかの接点があるかもしれない。

来場者にも、出店者にも接点がある。しかも、ノートパソコン一台あれば、その場で実物を見せることができる。
MKとAIにとって、単に人通りの多い場所へ出るより、ずっと試してみる価値のありそうな場所に見えた。

そこから二人は、当日の動きまで詰めていった。

MKがノートパソコンを持って電車で安城へ行き、ブースでは「お悩みはっきりくん」をすぐに動かせるようにしておく。
無理に客引きはせず、興味を示した人がいればその場で実際に使ってもらい、欲しいと言われたらココナラの商品ページを案内する。
売れなくても、実際に使った人の反応を聞くことはできる。
商品のどこに興味を持つのか、5,000円という価格をどう感じるのか。それだけでも、ココナラに商品を置いて待っているよりは得られるものがある。

AIとの会話から出てきた一案だったマルシェ出店は、いつの間にか「10月4日にノートパソコンを持って安城へ行く」という具体的な予定に変わりつつあった。

MKとAIに足りていなかった視点

その後、MKはマルシェへの出店計画を妻に話した。
10月4日に安城へ行き、「お悩みはっきりくん」を実演する。同じフロアには占いやカウンセリングも出店するので、来場者との接点もありそうだと説明した。
若干興奮気味に話すMKに対し、妻は冷静な顔で言った。

占いやカウンセリングに興味を持って会場へ来た人がいたとして、その人がなぜ、50歳の男性がノートパソコンを置いて座っているブースへ入るのか。
そこで足を止めるだけではなく、椅子に座り、初対面の男性に副業やお金の悩みを話すところまで、本当に進むのか。

MKとAIがそれまで詰めていたのは、どこへ出店するか、何を持っていくか、どう実演するか、購入希望者をどこへ案内するかという、ほとんどが出店する側の動きだった。
一方、妻が見ていたのは、そのブースの前を歩いている客だった。

妻には、朝からノートパソコンを持って安城へ行き、6時間ブースに座ったものの、誰からも声をかけられず、見向きもされないままイベントが終わり、疲労困憊で帰ってくるMKの姿が「ありありと浮かんだ」という。

いきなり出店するのではなく、まず客として一度見に行ったらどうか。
どんな人が来て、どんなブースで足を止め、どういうやり取りが行われているのか。それを実際に見てから出店を考えても遅くない、と妻は言った。

こうして10月4日は、MKが出店する日ではなく、妻と一緒にマルシェを見に行く日に変わった。

その話の中で、妻はもう一つ別の案を出した。
「悩みをはっきりさせるソフトより、インスタで情報発信するためのツールを作ったらどうなの?」
MKには、思い当たる人がいた。

半月以上、使われなかったソフト

少し前、MKは知人の行政書士に、自分で作った執筆ソフトを提供していた。
テーマを入力してAIからの質問に答えていくと、ブログやコラムの原稿を作ることができる。
行政書士は、そのソフトを受け取った際、「この執筆ソフトを使って、Instagramで情報提供していきたい」と話していた。

ところが、それから半月以上たっても、Instagramで情報発信を始めたという話は聞かなかった。
MKが理由を聞くと、執筆ソフト自体は便利なのだが、もともとブログやコラムを書くためのものなので、Instagramでどう活用すればいいのか分からず、そのままになっていたという。

考えてみれば、ブログやコラムとInstagramでは、情報を発信するまでの手順が違う。
前者なら文章を書き上げれば公開できるが、写真や画像を中心とするInstagramでは、文章が完成しただけでは投稿にならない。
執筆ソフトは文章を作るところまでは手伝ってくれる。しかし、「Instagramで情報発信したい」という行政書士にとっては、その先が残ったままだった。

MK

AIと議論して企画だけ進めてしまうということを反省し、AIと『我々は現地現物が足らない』と反省していたのです。
そこで『現地現物を確認するため、リアルな販売現場へ出てみよう』という話になったのですが、ここが間違いでした。

商品を開発して販売する上での『現地現物』は、困っている人の声を実際に聞き、それを取り入れること、なんですよね。

行政書士の話を出発点にするなら、次に作るものにはもう一つ条件が必要だった。

Instagramで情報発信をする以上、一度投稿して終わりではない。数日後、あるいは翌週には、また次の投稿を作ることになる。
士業の仕事をしながら続けるのであれば、一回の投稿に30分、1時間とかけることを前提にしたソフトでは、いずれ使われなくなる。
必要なのは「作れる」ことだけではなく、普段の仕事の中で無理なく繰り返せることだった。

10分ならどうか。
MKは、さらに半分まで削ることにした。

1回にかけられる時間は、最大5分。